NATURE(03March 2005号)より
- Japanese call for more bite in animal rules -


                                          実験動物福祉担当 川端 賢

 動物愛護管理法の改正協議において、野党政党は3Rの明文化、動物実験関連の施設に対する届出制の導入、統一ガイドラインの制定、第三者評価システムの導入といった、動物実験に対する法的な規制の必要性を訴えてきました。法的規制の導入を望む動物福祉活動家達の声が野党の主張の背景にあるようです。しかし与党は野党の提案に同意せず、結局改正案には3Rが盛り込まれるのみに留まりました。
 こうした日本の動向は諸外国からも注目されているようで、Natureにも取り上げられています。以下に翻訳したものを引用いたします。

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 日本では国内の実験施設における動物の使用をどの程度制限するかという点において、動物福祉活動家と研究者の間で衝突が起きている。
国会では、1973年より施行された動物愛護管理法の改定案が今年の6月までに通過が見込まれるなか、動物福祉活動家は動物実験に法的な規制の導入を望み、一方研究者は自発的なガイドラインを導入すると主張し、両者間に摩擦が生じている。
 この問題に国民の関心はふくらみ、国会に対して法律を強化させる圧力となっている。2月24日に東京で行われた公聴会で、現行のシステムは実験室で何が行われているか推測の上で成り立っている、と民主党の金田誠一議員は述べた。
 現時点では環境省が1973年の動物愛護管理法を基準に全般的なガイドラインを執行している。しかし、研究者が計画する方法で動物が扱われるべきか否かといった、一部の実験に関する倫理的な問題は、その研究を支援している省庁自体が取り扱っている。
 研究者達もこのシステムに改良の余地があることを認めている。公聴会で日本学術会議の代表は、日本は「ルールの存在しない無法地帯だ」という世評を認識しており、国内における企業および教育機関の実験施設を網羅する自発的ガイドラインを履行するべきだ、と神経科学者である代表は動物福祉団体の標的になる事への懸念から名前を伏せた上で述べた。
 日本学術会議が提議するガイドラインは、各実験施設に動物実験を監視する委員会の設立を義務付けており、さらにAAALACに代表されるような、第三者機関による認定制度の導入の必要性も訴えている。
 こうしたガイドラインが履行されることで、動物実験に対する法的な規制は不要、あるいは法的規制は地方自治体の自由裁量に任されるであろうと日本学術会議は述べる。
 一方ALIVE・地球生物会議などの動物保護団体は、研究者自らによる規制では意味がない、と主張する。昨年9月にALIVEが行った調査では、大半の大学の医学部において、実験に使用された動物の数が記録されていない、という結果が出た。ALIVE代表の野上ふさ子氏は「研究者はあらゆる説明責任から逃れようとしているに過ぎない」と述べ、改正法には少なくとも実験施設や研究者が、動物実験を行う旨を政府当局に報告することを義務付けた登録制度を含むべきだ、と氏は訴える。
 他国にはさらに厳しい規制がある。イギリスは動物実験施設に認可制度を導入しており、アメリカでは自発的なガイドラインに加え、罰金制度付きの抜き打ちの施設調査の実施など法的な評価制度を併用している。
 民主党は連立与党との交渉を行う事で、さらに制限的な法律の制定を目指している。改正への勢いは強いようだが、行政や自民党はこうした規制の強化にそれほど熱心に取り組んでいないのが現状だ。


                                                        訳:川端

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引用: Cyranoski, David. 2005. Japanese call for more bite in animal rules. Nature, 434
    (03March, 2005):6.




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